WEB・CD-ROM・DTPのサムクイックがお届けするコラムページ「私的事情」です。 どうぞごゆるりとお楽しみください。

 
 
 
村井知生 1971.11.28 B
後天性ヒキコモリ気味なお遍路野郎。
一人でいると外にでたくなり、外にでると帰りたくなる。ペシミスティックなオプティミストを標榜し、日々此れ勉強。宮沢章夫のコラムが好きだが、電車の中で笑っていると変質者じみていて、堪えると苦しく涙が。。。

 
お遍路徳島編(6)山登り
2006.02.03


焼山寺へ向かって早1年。まったく更新できていなくて、未だに裾野にいる有様。この辺からが本格的なお遍路経験だったにもかかわらず、導入部分で立ち止まってしまった。けど、まあ、こんなペースで書いていけばそのうち時間が出来て一周までレポートできないことはないかもしれん。

焼山寺への行程は、お遍路をはじめたばかりの私(誰でも最初の方に経験するのだろうけど)にとって大きな試練だ。正直、途中で何度か後悔したほどだ。何せアウトドアな人間ではない私は、「そこに山があるから」なんて愚にもつかない理由で山登りをしたりしないのだ。登らないと次の札所にたどり着けないから登る、それだけだ。

けど、スタート時、私はかなり舐めていた。それまでの行程がそれほど辛くなかったせいもある。お遍路などと大仰に崇め奉られているが大したことはないなと。これならチャラチャラ歩いても予定のコースは回れそうだ。そう思っていた。朝早く登りはじめたせいもあり、行く先行く先、蜘蛛の糸が絡まる。それをなぎ払いながら前に進む。それほど傾斜もきつくはない。仲間4人で登っているから楽なところもある。最初の関門「長戸庵」まではそれほどあっさり着いた。

「長戸庵」で少し休憩を入れ、先に進む。仲間の一人は既にグダグダ。私はまだ大丈夫だ。勢い良く続きの行程にかかる。が、しばらくいったところでふと身体に違和感を覚えた。先が見えないのもあるのだが、かなり体力を消耗している気がしたのだ。次の「柳水庵」までは持ちそうではあるが…。だんだんみんな無口になり、一人一人遅れ始める。勢いの良かった私も段々ペースが落ちる。横をお年寄りに抜かれるのはあまりいい気がしなかった。「柳水庵」に着いたときはかなりバテていた。元々体力に自信のある方ではない。「やめれば良かったか」と頭をよぎる。プライドが許さないが、出来ることならココでゆっくり休みたいところだった。

しかし、行程はまだ半分。まだ終わりも見えないのに休むわけに行かず続きの取り掛かった。が、道を見て唖然。傾斜は急になっているし、道も悪い(今までが良かったとも言えるが)。もう少しも先に進みたくない。身体に鞭打って進む。こんな経験はしばらくなかった。景色は段々良くなっていくのだが、体力が本当に奪われていく。ひたすら「一本杉庵」を目指す夢遊病者4人がいた。

どうやって「一本杉庵」にたどり着いたか覚えていない。かなり急な坂を上がったらあったように記憶している。もうダメかもしれん、と個人的には思っていた。が、仲間の手前あまり弱音は吐けない。歩き始める。あとは焼山寺を目指すのみ。

既に体力の限界を超えている4人。後ろから来ている人たちに抜かれっぱなし。どこからどう見ても私たちが一番若い。そして一番ダサい。あぁ〜、何てことだ。東京のど真ん中で「ダリ〜な」とか言って何とかなっていたあの頃が懐かしい。頑張れ、頑張れ、オレ。てか、こんなところでやめてどうすんだ?既に帰ることすらままならない。先に進むしかないのだ。

私は進んだ。亀よりも少し遅いくらいの速度で。とまるわけにいかない。とまったらそこから再スタートする自信がない。前に足を踏み出す。もう一歩も前に。下しか見えないので土の色しか覚えていない。ふと上を見上げる。人だかりが見える。え、なになに?頂上なのか?良く覚えていないが、私たちを追い抜いていった人たちが心配そうに見ている。そう、見下ろされている4人。私たちは奮い立った。うん?全然疲れてないよ、余裕だこんな山、ってな具合に。そして、焼山寺にたどり着いてバッタリ。あ〜、しんど!

お遍路ってそんな生易しいものじゃないと心底思った。まあ、簡単にあんな山を越えてしまう人もいるだろう。けど、私はそうじゃなかった。何かを試されているように感じた。それを越えたときは、恥ずかしながら、「やった!」と思ったのだった。



【不定期ブックレビュー】


ジハード(1)〜(6)集英社文庫 定金 伸治
歴史小説の流れで読み始めて本だが、こちらはファンタジーもの。歴史観などは参考になるところがある。負け続ける主人公。だが、敵は彼を最重要人物と認識する。そして仲間とのやり取り。人が人と一緒にいたいと思う理由はその人物が「偉大」だからとか「立派」だからではない。「好き」というのとも違う。強いてあげるとしたら、その人が持っている空気なのかもしれない。
イスラム側に組したキリスト教徒。そこに思想的な意味はない。何故戦っているのか?誰と戦っているのか。争いとは、連綿と続く流れの中にあり、本来は必要のないものなのじゃないかとこの本を読んで考えた。非常に読みやすいシリーズ。中学生でも読めるし、大人が読んでもいける。途中ちょっとついていけない表現もあるけどね。
 
Back Number
 04.7.8  
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04.08.06
05.02.16
05.02.25
05.04.04
05.04.22
No.001 お遍路事始(1)「動機」
No.002 お遍路事始(2)「修行」
No.003 お遍路事始(3)「旅立つ者」
No.004 お遍路徳島編(1)「四国」
No.005 お遍路徳島編(2)「お遍路さん」
No.006 いや、少々お待ちください(言い訳君)
No.007 お遍路徳島編(3)「お接待」
No.008 お遍路徳島編(4)「友人」
No.009 お遍路徳島編(5)「9.11」




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