WEB・CD-ROM・DTPのサムクイックがお届けするコラムページ「私的事情」です。 どうぞごゆるりとお楽しみください。

 
 
 
村井知生 1971.11.28 B
後天性ヒキコモリ気味なお遍路野郎。
一人でいると外にでたくなり、外にでると帰りたくなる。ペシミスティックなオプティミストを標榜し、日々此れ勉強。宮沢章夫のコラムが好きだが、電車の中で笑っていると変質者じみていて、堪えると苦しく涙が。。。

 
お遍路徳島編(2)「お遍路さん」
2004.08.06


杖なんて、ついたことなかった。

第一札所「霊山寺」は堂々としたお寺でした。私は大学生の頃からお寺や神社が好きで、夜中に良く入ったものです。小洒落たカフェも良いのですが、私は神社の境内でたこ焼きなどを食べながらうだうだするのを好みました。みんながみんなそんなデートに付き合ってくれるわけもありませんでしたが。

ともあれ、29才の私がお遍路の始点にたった瞬間でした。まずはお寺にと思ったのですが、興味に負けて目に入ったお遍路ショップに足を踏み入れました。お店の人はいたのです。ただ、「いらっしゃいませ」と言われなかっただけなのでした。臆することなく、威風堂々と私は切り出しました。「お、お遍路ぉ〜、えぇぇと、お遍路?いや、あの、お遍路できますか?」

案の定、「すれば?」って目で見られます。うん、「できますか」はないだろう。そりゃあ、おばあちゃんも「ど素人が!」と思うよ、トホホ。だた、おばあちゃんは言いました。「やろうと思えばなんでもできる!」。良い人でした。春一番の猪木のモノマネばりに言い切った後、おばあちゃんは懇切丁寧にお遍路を私に説いたのでした。そして、バカ高いお遍路グッズを私に売りつけたのでした。

私はモノの価値を知りません。昔も今も一緒です。それほどモノが欲しいとも思わない、けれども必要なら全部手に入れようかなと思うタイプです。「ポテトいかがですか?」と訊かれて断ったことがありません。そして、ポテトはあんなに要りません。おばあちゃんは「アレもいるわね、コレもいるわね」と大忙しです。切り上げたのは、立ってるのが面倒くさくなったからでした。

購入したお遍路グッズはその場で身に着ける決まりみたいで、ショップから出てきた私は、お遍路さんでした。多分、観光客として「お遍路さんだ!」と言う人間から、観光客に「お遍路さんだ!」と言われる人間に変わったわけです。

ただ、もちろん私の気持ちがそう簡単にお遍路さんになるわけではないでしょ。だから、お遍路さんを見たら「あ、お遍路さんだ〜」と思うのです、自分の姿も省みずにね。


<次回予告:「お接待」>


【お遍路豆知識】

お遍路グッズはそれほど安いものではない。一通りそろえると2,3万くらいになってしまうこともある。ただ、最初からフル装備が必要なわけではなく、知り合ったお遍路野郎たちの中には、ショップに入りすらしなかったというツワモノも。それでも彼はお遍路さんなのであった。



【不定期ブックレビュー】


「リヴィエラを撃て」   高村薫

不安なく日常生活を送ることが困難な人たちがいる。政府関係者、特殊組織に属する者。自分に置き換えて考えることは出来ないが、小説の中でならそんな生活を味わうことができる。高村薫の描く人物像、時代背景、そのすべてが臨場感を持って胸に響く。
サスペンス要素もあり、推理要素もあり、久々に小説を読んでドキドキした。

 
Back Number
  04.7.8  
04.7.14
04.7.16
04.7.28
No.001 お遍路事始(1)「動機」
No.002 お遍路事始(2)「修行」
No.003 お遍路事始(3)「旅立つ者」
No.004 お遍路徳島編(1)「四国」




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