| | WEB・CD-ROM・DTPのサムクイックがお届けするコラムページ「私的事情」です。
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外村 大 |
左の写真は、韓国ソウル、清渓川の上の橋に建てられた全泰壱(チョン・テイル)の像。勤労基準法遵守を叫び焼身自殺を遂げた人です。像の周りの歩道には、個人や労働組合によるメッセージ入りのプレートが埋め込まれており、興味深く読みました。足元が重要、ちょっと立ち止まって見てみましょう。ずっと、そればかりも困るのだけど…。 |
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菊地成孔・大谷能生著『東京大学のアルバート・アイラー』(メディア総合研究所、2005年)を図書館で目にしたのは去年の11月くらいであったか。「スピリチュアル・ユニティ」(登川誠仁じゃなくてアイラーの、です)とか「ベルズ」あたりは私の愛聴盤でもある。そんなわけで、早速、貸出の手続をとった。
この本自体はアイラーだけに焦点を当てたものではなく、東大駒場でのモダンジャズ史の講義録をまとめたものである。菊地・大谷両氏は、授業中、ジャズの曲をいろいろ流したわけだが、アイラーまで紹介した、ということから本のタイトルとなったようである。読んでみると非常に面白い。でも、音楽学はよくわからないので(そもそも、楽譜自体が読めません)、いま記憶に残っているのはポピュラーミュージックにおけるエスニシティの要素の話など、本筋よりは雑多なエピソードの方が多い。
東大駒場というところは面白い授業をやっているのだな、と感心していたら、その東大駒場で半期、講義をやってくれという話がその直後に来た。浅学を顧みずお受けしたのは、曜日をあわせたら菊地さんの授業にもぐれるかも、という期待もあったからである。ところが、菊地さんの授業は2005年度で終わりだったようで、東京大学でジャズ史を学ぶことはできなかった。残念。
さて、私の担当したのは近現代史で、在日朝鮮人と日本人との関係を中心にエスニシティの問題を入れて歴史を見るとどうなるか、といったことを話した(つもりだけど、なかなかうまくはまとまらず、反省)。話が下手なので、映像とか写真、それと音楽などをいろいろ紹介した。在日朝鮮人に関係する音楽で紹介したのは、「国民協和の歌」(もちろん、オリジナルの音源はないので藍川由美さんのCDを使った)、それと永田弦次郎の「大政翼賛の歌」である。ちなみに、菊地さんの授業は大教室でもぐりの出席者も相当いたようだが、当方の授業は30人位が座れる小さな教室で、毎回、“定足数足りてないな”といったレベルの出席状況であった。
「国民協和の歌」は協和会が紀元2600年を記念して歌詞を募集して作ったもので、当然、「内鮮一体」を打ち出したものだ。永田弦次郎は本名・金永吉で平安南道生まれ、1928年に渡日、陸軍戸山軍楽学校で学んでいる。オペラ等でも活躍したようだが、流行歌も歌った。永田弦次郎という日本名は、当時の東京市長の氏と作家・吉田絃二郎の名前からとったものと言われている。ただし、日本名を用いていたが、朝鮮人であることを隠していたわけではなく、“半島のテナー”と呼ばれていた。彼の残した音源で、いま、耳にすることができるのは多くが国策協力の歌で、「大政翼賛の歌」もその一つである。これらの歌を紹介しつつ、戦時下の朝鮮人の置かれた状況について話したわけであるが、学生側が歴史についての理解を深めてくれたかどうか、自信がない。と言うより、そもそも戦時下の朝鮮人たちの内面について、歴史研究者側もしっかり理解できているかどうか、これも疑問である。そんなことを思いつつ、東大の半期の授業を終えた。 |
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