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外村 大 左の写真は、韓国ソウル、清渓川の上の橋に建てられた全泰壱(チョン・テイル)の像。勤労基準法遵守を叫び焼身自殺を遂げた人です。像の周りの歩道には、個人や労働組合によるメッセージ入りのプレートが埋め込まれており、興味深く読みました。足元が重要、ちょっと立ち止まって見てみましょう。ずっと、そればかりも困るのだけど…。
 
力道山伝説の? その(7):入幕前の力道山
2006.2.7


 前回も述べたが、大相撲の力士としての力道山については、これまで主に証言から語られてきた。そこでは、やはり力士としても有能であり、将来を期待されていた存在であることが明らかにされてきた。
 先だって、当時出されていた相撲愛好家たち向けの雑誌をめくってみて、なるほど、実際にそうであり、人気があったことも確認できた。何しろ、まだ幕下の時点から、ファンの間でも力道山が話題にされているのである。
 『相撲界』1944年3月号の「質疑応答」欄には、力道山についての「二所ノ関党」による「幕下力士中最有望と思ひますが如何ですか」という質問があり、次のような回答となっている。

常に元気一杯、稽古も人一倍熱心な力士ですが、幾分元気にまかせて粗雑な相撲をとりますので、春場所など期待はづれの負越しの成績でした。今後相撲に巧みと慎重さが出てくれば、鬼に金棒でしまった肉付のよい体を持っていて、気魄もよいので将来を期待し得ます。

 その後開かれた1944年夏場所で力道山は全勝優勝を果たす。これについての『相撲界』の「解説」は次のようになっている。

…力道山は腰が柔く、粘りがあって、投もよく利き、双葉山の若かりし頃を髣髴せしむるものがある、つとに有望力士たることは衆目の一致するところであって、…欲を云ったらすでに十両に入るべき筈なのであるが、春場所にはいささか不調で負越してしまった。本人の言によると胃腸を痛めたと云っているが、場所前に体を痛めるとは言語同断である。とくに一擲乾坤を賭す大切な登竜門をひかえて、慎重を期すべきであると思っていると、夏場所には強敵千代ノ山を櫓投に一蹴して気を吐き、堂々全勝優勝を果した。四つになってから、間髪を入れず寄って行く具合や、投げ吊りに出て行く妙味は、充分稽古を積んだ跡歴然たるものが見られた。十両に入っても立派に働ける実力を身につけていた。ただ、美男子にあり勝ちな、周囲からの誘惑に身を失ふことのないやう、苦言を呈して自重精進を望んで置く。

 ちなみに、千代ノ山は力道山より若いが、番付で若干、力道山の先を行き、力道山が関脇にとどまっていた1949年に大関となり、さらに1951年に横綱となっている。


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04.07.20 第1回:確かにブームではある
04.07.24 第2回:朝鮮語教師のVサイン
04.08.12 第3回:個人的記憶でさかのぼる過去の「韓国ブーム」
04.08.20 第4回:最古の「韓国ブーム」はいつか
04.08.28 第5回:では、「朝鮮ブーム」はどうだろう
04.09.17 第6回:K−POPは知らないけれど……
04.10.02 第7回:前回の補足、中間のまとめと今後の見通し
05.02.04 第8回:キムチの気持ち:その1 過剰な意味づけはやめてくれ!
05.02.25 第9回:キムチの気持ち:その2 諸悪の根源のように言われても……
05.03.18 第10回:キムチの気持ち:その3 帝国末期の脚光?
05.04.04 第11回:キムチの気持ち:その4 学校の中の差別
05.04.11 第12回:キムチの気持ち:その5 第一印象は悪いが……
05.04.15 第13回:キムチの気持ち:その6 旅の土産にどうぞ
05.04.25 第14回:キムチの気持ち:その7 普及阻害の要因は?
05.05.02 第15回:力道山伝説の? その(1):昨今の情勢を鑑みるに…
05.08.02 第16回:力道山伝説の? その(2):長崎は今日も出身地だった……
05.08.09 第17回:力道山伝説の? その(3):そんなわけで人名辞典の類を調べた(日本編)
05.08.31 第18回:力道山伝説の? その(4):そんなわけで人名辞典の類を調べた(北朝鮮編)
05.09.22 第19回:力道山伝説の? その(5):そんなわけで人名辞典の類を調べた(韓国編)
06.01.30 第20回:力道山伝説の? その(6):初土俵の頃の力道山を伝える新聞記事から

 
 


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