WEB・CD-ROM・DTPのサムクイックがお届けするコラムページ「私的事情」です。 どうぞごゆるりとお楽しみください。

 
 
 
外村 大 左の写真は、韓国ソウル、清渓川の上の橋に建てられた全泰壱(チョン・テイル)の像。勤労基準法遵守を叫び焼身自殺を遂げた人です。像の周りの歩道には、個人や労働組合によるメッセージ入りのプレートが埋め込まれており、興味深く読みました。足元が重要、ちょっと立ち止まって見てみましょう。ずっと、そればかりも困るのだけど…。
 
キムチの気持ち:その1 過剰な意味づけはやめてくれ!
2005.2.4


  そろそろキムジャン(キムチ漬けの仕込み)の季節ですね―という書き出しで、コラムの続きを書こうと思っていたのはもう2ヵ月以上前。すでにキムジャンの季節ではない。
  ただし、実際の話、我が家ではこの前、白菜キムチを漬けた。スーパーで買ってきたキムチがまずかったので、家で漬けることにしたのである。お蔭で美味しいキムチができた。
  だが、しかし、である。実は我が家ではあまりキムチを消費しない。家庭内では"辛いのがだめな人"と"そんなにキムチがありがたいとも思わない人"の2種類の人しかいないためである。そんなわけで、漬けたキムチのかなりの量は近隣の方、友人知人、御世話になった方々におすそ分けとなった。しかも、自家製キムチの製作者は"辛いのがだめな人"である。実に矛盾した行動。
  ちなみに、"そんなにキムチがありがたいと思わない人"は私自身である。そして、自分の周辺だけのデータによる判断に過ぎないが、韓国留学経験者、長期滞在者は結構、そういう人が多いように思う。
  韓国の食堂では、一般的にはキムチは別に頼まなくても出てくることになっている。中華料理の店でジャジャン麺(=日本のものとはちょっと違うけどジャージャー麺、韓国の人気外食メニューで、出前も30秒くらいで持ってきてくれたりしたので我が家の韓国滞在中もよく頼みました)を注文した場合についてくるのは、なぜか生のタマネギと沢庵であるが、外来の料理じゃなければ、キムチがついてこないということはまずない。しかも、というかそんなことから、というべきか、食堂のキムチはまずいケースもしばしばある。かくして、韓国の住民となってしまうと、キムチはありがたくはなくなってしまったりするのである(同時に、日本に戻ってきて居酒屋で「キムチ盛り合わせ500円」とか書いていると激怒したりするようにもなるわけであるが)。
  そんなわけで、韓国の食堂では結構な量のキムチの食べ残しが出る。これに関連して印象深いのは、我が家でしばしば利用した高麗大寄宿舎を降りていったところにあったソルロンタン(牛の頭の骨でだしをとって肉や野菜を煮込んだスープ)屋である。そこでは「キムチは韓国の自尊心だ」という標語がわざわざ壁に掲げてあった。つまりは「キムチを捨てるようなことはするな」ということである。付言すれば、「自尊心」の語は、韓国語の場合、アイデンティティと置き換えられる文脈でも使われることがある。
  しかし、なんか、そんな過剰な意味づけをされても、キムチも困るのでは。そのこキムチは美味しかったので言われるまでもなく、残さなかったけど。
余談。このコラムの初回での予想通り、NHKで「宮廷女官チャングムの誓い」の放映が始まったらそれにあわせて韓国宮廷料理の本とか、家庭で作れるチャングムの料理といった類の本が出版された模様。NHK「今日の料理」の今月のテキストも、ジョン・キョンファさんを全面に立てて韓国料理の特集を組んでいる。ついでに言うとこの号ではNHKの受信料集金人の募集と思われる広告のページがあるのだが、これが仕事の内容が何であるかわからないようなあやしい文面になっている。こんなので応募して来る人がいるのか?

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04.07.20 第1回:確かにブームではある
04.07.24 第2回:朝鮮語教師のVサイン
04.08.12 第3回:個人的記憶でさかのぼる過去の「韓国ブーム」
04.08.20 第4回:最古の「韓国ブーム」はいつか
04.08.28 第5回:では、「朝鮮ブーム」はどうだろう
04.09.17 第6回:K−POPは知らないけれど……
04.10.02 第7回:前回の補足、中間のまとめと今後の見通し

 


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