WEB・CD-ROM・DTPのサムクイックがお届けするコラムページ「私的事情」です。 どうぞごゆるりとお楽しみください。

 
 
 
ロンドン小林 1973.8.24 B
某国立T大院卒, 博士号,一応あり.米国留学を経て,現在「宇宙のその先」について夢想中.最近は「ニュースジャパン」の滝川クリスタルがお気に入り。ニュースなのに,なぜか妖艶なあの雰囲気.おにゃんこ世代の心,ときめく.
 
僕とゾウ [No. 1]
2004.07.8


 僕はゾウが好きだ。正確に言えば、最近、ゾウが好きになった。6000kgの身体に6kgの脳。恐竜が絶滅した現在、現存する最大の陸上動物だ。少年の頃田舎の動物園でよくゾウを眺めていた。年老いたアジアゾウだ。足を鎖でつながれ、見るからに鬱状態。彼の前で、ゾウさんの唄を陽気に口ずさむ雰囲気はなかった。

 ある日、動物園に勤務する叔母に、開園前のゾウ舎にこっそり入れてもらった。そこで目にしたもの。それは、係員が、老化で皮膚がはげたゾウの尻に、ペンキを塗っている光景だった(絶句)。たしかに、動物園のゾウは、見せ物だ。見せ物である以上、きれいであった方がいいかもしれない。ただ、それを見て、悲哀を感じずにはいられなかった。それ以来、僕は動物園に足を運ぶことをやめた。10年以上は行かなかった。この光景とペンキの臭いが、脳の奥深くに「心傷」として刻まれたのに違いない。

 そして、21世紀。ゾウと再会する。僕はいま、少年の頃の記憶とともに、この大きな生き物に対峙している。潤いがちなゾウの目を覗き込みながら、「幸せかい?」と問いかける。僕とゾウの物語は、こうして始まった。





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