WEB・CD-ROM・DTPのサムクイックがお届けするコラムページ「私的事情」です。
どうぞごゆるりとお楽しみください。
モリヤアズサ 1974.2.26
2月26日生まれということもあってか、
周囲にも自分にも事件(?)が多い人生。
そんな中、7月4日(米国独立記念日)に娘を授かる。
次は5月15日あたりにナニかが 生まれるのかしらとドキドキする30歳。
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Vol.007 〜台風夜 その3〜
Vol.006 〜台風夜 その2〜
Vol.005 〜台風夜 その1〜
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Vol.005 〜台風夜 その1〜
窓に打ち付ける風と雨と木の葉と轟音。
ちいさい時に見たB級ホラー映画みたいでちょっと怖い気もしたけど
思い切って外を見てみたらコンビニが店を閉めるところだった。
おそらく駅前で一つだけのあのコンビニもこの台風ではやってられないのだろう。

それより私達はこれからどうやってこの夜を過ごそうか。
こんなちいさな駅のこんなちいさな部屋で二人ぼっち。

そもそもどうしてこんなことになったんだろう。

「大型で強い勢力を持った台風が日本に接近している」
何度もニュースで耳にしていたことなのにまるで人ごとのようだった。
まさか自分がそのことで被害に遭うとは思ってもみなかったのだ。
自分だけは大丈夫だなんて勝手に思い込んでいた。不思議なことに。

でも現実はそう甘くはない。
目的地まであと一駅になりそろそろ荷物をまとめようとしたその時
突然列車が速度を落としはじめたかと思うとトンネルに半分入ったところで止まった。
まだ晴れ間も見える空を窓越しに見上げたが風が強いようには見えなかったし
どうしてこんなところで停車したのか乗客には理解出来なかった。

もちろん2歳の彼女に解るはずもなく窓の外を見て手を叩いてはしゃぎだした。
すると通路をはさんで隣の座席の外国人男性が手拍子に合わせて歌い出した。
ちょっと驚く彼女に手を差し出して一緒に歌おうとばかりに微笑んだ。
きゃっきゃと笑いながらますます手を激しく叩く彼女。
また別の外国人男性が寄ってきて一緒に歌い出したりして
まるで「世界の車窓から」に出てくるどこか長閑な国の風景みたいになってしまった。

話を聞くと彼等はミュージシャンでこれから次の駅で降りて演奏するらしい。
音楽は好きかと訊かれたので夫もベーシストだと答えると嬉しそうに後ろを指さした。
見ると大きなウッドベースが置いてあって自分はジャズをやってると教えてくれた。

こんな時になんという素敵な出会いがあるものかと心躍らせる私を尻目に
突然車内にアナウンスの声が響き渡った。
一瞬おとずれる静寂。でも彼女は歌うのをやめなかったけど。

どうやら台風のせいで飛来物が高架線に引っかかったらしい。
なるほどそれじゃあ動けないな。
っておとなしく納得してるほど普段はお人好しじゃあないのだが
今はなんだかこの状況を嬉しく思っていたりしてなんとなく許せちゃったのだ。

いつかまた列車が動き出すまでこの空間を眺めていられると思うと
何故か穏やかにいられて彼女にもそれが伝わったみたい。
他の子供が退屈そうに駄々をこねても彼女はマイペースで歌っていた。
もちろん隣では彼等も歌っていてそれから2時間ばかり私達は歌い続けることになる。

つづく。
2004年9月17日(金) No.8


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