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Vol.004 〜彼女のベランダ〜
Vol.003 〜蝶々ひらひら〜
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目に映るものすべてが新しくて眩しくて清らかで そんな時代が自分にもあったなんて今ではとても不思議だけど。
蛍光灯の周りには色んなモノたちが行き交っていて大混雑。 そのうち信号機でもつけてあげないとぶつかっちゃって大変だな。
それにしてもちいさなそのモノたちは皆一様に光に群がっていて まるで他のことには関心がないかのように見えるのだけど それでも時々思い出したように夜の空へ抜ける。ひらひらと。
あ、ちょうちお。 突然嬉しそうに声を上げる彼女。 え?ああ、蝶々って言ったのか。あれは蛾だよ。 真面目に教える私なんて全く気にする様子もない彼女は 2歳ながらにして昆虫博士も顔負けの集中力。
どうやら飛んでいるものすべてが美しい蝶々に見えるらしい。 あちこちの蛍光灯を見つめては指さし叫ぶ。 ちょうちお、ちょうちお、あ、ちょうちお!
色んな形の「ちょうちお」がそこらじゅうで舞い踊り 蛍光灯を崇めるように群がってはやがて散っていく。
彼女にとっての「ちょうちお」は飛んでいるということが条件なので 散ってしまった彼等はきっともう「ちょうちお」ではない。 むしろ草木や砂や石や花に近いのだろうか。 だから夜が明けて地面に横たわる彼等を見ても素知らぬ顔だ。 もしかしたらいつかまた還ってくることを知っているのかもしれない。
ちいさな彼女の目に映るちいさなモノたちが いつまでも新しくて眩しくて清らかではないのだろうけれど すこしでも長い間そうであればいいなあと心からそう願う。 振り返って彼女を見るとまた上を指さし叫んでる。 あ、ちょうちお! え?ああ、あれはねカラス・・いや、・・蝶々だよ、うん。 大きな「ちょうちお」が晴れた空に抜けていった。
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2004年7月29日(木)
No.6
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