最新のコラム
Vol.007 〜台風夜 その3〜
Vol.006 〜台風夜 その2〜
Vol.005 〜台風夜 その1〜
Vol.004 〜彼女のベランダ〜
Vol.003 〜蝶々ひらひら〜
Vol.002 〜カミナリ鳴鳴〜
Vol.001 〜お散歩ららら〜
[最新のコラム]
|
|
最新のコラム
|
もしかしてもう夏が終わる日が近いんだっけ、とか思った。 だって洗濯物を干そうとしてベランダに出てみたら アブラゼミの亡骸が足元で風に吹かれてカサカサ音を立てていたんだもの。
一瞬ビクッとしたのは隣にいた娘とその腕に抱かれたサルのぬいぐるみ。 おそらく彼女はこういう類の昆虫を間近で見るのは初めてだ。 もう少しちいさいたとえばアリとかだと喜んで顔を近づけるのに さすがに立派な大きさのセミとなると腰が引けるらしい。
ん〜〜?怖いの〜?と意地悪ママを演じてみたらなんと本当に怖いらしい。 私の膝のあたりにしがみつきながら太股に顔をくっつけてきた。
サルのぬいぐるみがプラプラ揺れて落っこちた。あぁあ。
しばらくして少しずつ顔を起こし始める彼女。 ちいさなその手は相変わらず私の膝のあたりをキュッとつかんでいたけれど すこししてからサルのぬいぐるみをさっと拾い上げると 自分の顔のかわりに私の太股にくっつけてきた。暑いんだけどなあ。
灼熱のベランダで子供とサルにくっつかれてセミの亡骸の前。 もしかして夏が終わりそうだなんて思ったのはきっとただの願望なのかも。
昔はちがってた。自分が子供の頃は。 夏休みがいつまでも続けばいいと本気で思ってた。 そのことを親に言うと決まって冗談じゃないよって言い返されたっけなあ。
この子がいつかそんなことを言うときが来たらなんて答えよう。 でもその時はきっとこうしてくっついてはくれないんだろうなあ。 なんて考えてたら急に彼女を抱きしめたくなった。暑いから嫌がるかな。 試しにしゃがんで抱きしめてみたらは以外にも素直に抱かれてくれて嬉しかった。
セミの亡骸がカサカサ音を立てながら仰向けのまま回る。 きっとこんなベランダのコンクリートの上じゃ暑いだろうから土に還すことにした。
彼女は自分の領域から得体の知れないモノがいなくなることを 喜んでいるようにも見えたけれど実は少し寂しかったのかもなあ。
|
2004年8月10日(火)
No.9
|
|
|
|